摂食嚥下リハビリテーション・食事指導について

飲み込みの検査や評価、リハビリテーションを行い「機能の改善」を図ります。

摂食嚥下(えんげ)機能障害とは、さまざまな疾患に伴って生じてくる症候群です。
原因は器質的な障害や機能的な障害に分かれているため、歯科医師単独での判断はできません。嚥下機能評価・嚥下造影検査(VF)・嚥下内視鏡検査(VE)の結果に基づき、患者さんの主治医の先生をはじめ、他職種のスタッフの方と連携して「摂食嚥下リハビリテーションや食事指導」を提案いたします。
また、訪問歯科での歯科衛生士、言語聴覚士による口腔内や咽頭機能強化のトレーニングにも対応しています。

摂食嚥下リハビリテーションの内容

摂食嚥下リハビリテーションの最大の目的は、患者さんが安全に楽しく食事を摂れるように栄養摂取の方法を確立することです。適切な検査や観察のもとで患者さんの状態を把握し、訓練を行なったり食事形態や栄養摂取の方法を工夫したりすることで、患者さんの食べる喜び・生きる力を支援していきます。

口腔機能評価と検査

食べるために必要な口腔の動きを評価します。外から見えない飲み込みの状態を検査するため、医師による「嚥下造影検査(VF)」や「嚥下内視鏡検査(VE)」を行います。

嚥下造影検査(VF)

嚥下造影検査

嚥下造影検査とよばれるレントゲン検査を医師の監視下のもと行います。検査用の食べ物を飲み込んでもらい、口やのど、食道をX線で透視することにより、食事を飲み込んでいる様子を見ていきます。

嚥下内視鏡検査(VE)

VE検査

鼻腔から細いファイバースコープをのどに挿入し、咽頭部の形や動きの状態を直視下で観察する検査です。実際に飲食物を嚥下していただき、咽頭を食物が通過していく状況を観察記録し、気管に入ったり残留しやすいかなどを調べます。

口腔ケア/間接的訓練・直接的訓練

口腔ケアは、口腔内の衛生状態を改善させるとともに、お口本来の機能も改善させます。
訓練の方法には大きく分けて「間接訓練」と「直接訓練」があります。

間接的訓練

嚥下には舌や口腔内・咽頭・喉頭といった飲み込みに直接かかわる器官の機能のみでなく、呼吸や姿勢等が関連しています。首や肩、上肢や体幹などの可動域や筋力、そして呼吸機能などが影響します。口腔ケアや義歯の調整・ポジショニングは全身管理の基本となります。

嚥下訓練はできるだけ座位で行います。座位をとることで嚥下に必要な呼吸機能が改善され、咀しゃくや嚥下に関わる筋の動きも改善します。さらに口腔ケアを行うことで口腔内の雑菌繁殖が抑制され、また口腔内の刺激により唾液の分泌を増やし、舌や咽頭の動きを促すことになります。

  • 口腔ケア:意識の賦活(ふかつ)・肺炎予防・味覚の維持
  • 舌の可動域訓練:食塊保持・形成・送り込みの強化
  • 唾液腺マッサージ:唾液分泌の促進
  • のどのアイスマッサージ:嚥下反射の誘発・遅延の改善
  • 裏声発声法:咽頭周囲筋の運動・喉頭拳上の賦活
  • 声門閉鎖訓練:反回神経麻痺での声門閉鎖を促す
  • ブローイング:鼻咽腔閉鎖を促す
  • シャキア法:舌骨上筋群を強化
  • 咳嗽(がいそう)訓練:喀出(かくしゅつ)の強化
パタカラ体操

直接的訓練

実際に食べ物を用いて行う訓練です。主治医の許可を得てパルスオキシメーターや呼吸器を用意し、リスク管理を徹底して行います。誤嚥・窒息などの危険を伴うため、医師の管理下で行う必要があります。誤嚥を防ぐための体位や食形態の工夫、代償的嚥下法などを用いることで、誤嚥の防止を図りながら訓練を行います。安全かつ適切な難易度の食事を段階的に進めていきます。

  • 氷なめ:少量の水が嚥下を誘発
  • 複数回嚥下:咽頭残留を除去する
  • 交互嚥下:ゼリーなどの通りのよいもので、咽頭残留を除去する
  • 頸部前屈:気道が保護され、誤嚥が防止される
  • 横向き嚥下:伸展した側の咽頭通過改善
  • 息堪え嚥下:声門閉鎖の強化、飲み込んだ後に呼気で気道からの排除
  • うなずき嚥下:舌の送り込みができない場合、重力の力を借りる
介護食おかゆ

[参考文献] 
“口から食べる”を支える 在宅でみる摂食・嚥下障害,口腔ケア/南山堂 新田クリニック 院長 新田國夫 編著

食事指導

嚥下機能検査を踏まえて、誤嚥リスクの少ない食形態・姿勢・食べ方を指導いたします。摂食嚥下リハビリテーション学会が出している学会分類や各種介護食の分類を参考にして食形態をご提案します。

食上げ指標

食形態を上げる場合の指標を作成しました。むせ・発熱・痰量・食事摂取量・時間など、各種項目をモニタリングして対応します。

NMES(神経筋電気刺激)

神経筋電気刺激とは筋肉を電気で刺激することで、筋力の強化を行う方法です。当院では、摂食嚥下にかかわる舌骨上筋群や表情筋などの刺激、間接訓練との併用で使用しています。

【低周波治療器:イトーpostim(ポスティム)】
運動療法に電気刺激を加えることで、より効果的なリハビリテーションを実現します。飲み込みの際に主に働く舌骨上筋群(顎の下の筋肉)と呼ばれる機能の改善につながるといわれていますその他下記に適応しています。

  • 廃用性筋委縮の予防
  • 関節可動域の拡大
  • 筋機能の再教育
  • 一時的な痙性の抑制
  • 電気的補助具としての役割
  • 局所血流循環の増加
低周波治療器:イトーpostim
イトー postim

訪問診療での摂食嚥下リハビリについて

病気や障害などで病院に通院することが難しい方を対象として、訪問歯科診療での嚥下内視鏡検査(VE)や摂食嚥下リハビリを行なっています。
医療従事者や患者さんご本人の他に、ご家族、介護者の方からのご相談も受け付けています。
気軽にご相談、お問い合わせください。

訪問歯科診療

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口腔内のお悩みやお口のことで気になることがあれば
さいたまメディカルタウンビル2Fの歯医者
「さいたま口腔リハビリテーション歯科クリニック」にご相談ください。
当院は摂食嚥下とお口の健康に特化した「生涯おいしく食べる」をサポートする歯科医院です。